クロッシング・ワールド 第一話 ライトニング・フォース


第一話 ライトニング・フォース

修羅の乱・・・ 異世界から突如現れた天を貫く巨大な剣、ソーディアンを居城として地球に戦乱を齎した戦闘種族・修羅 それに介入し過ちの意味を知ろうとしたデュミナス、 そして古の黒き記憶、暗黒の叡智としてかつて別の世界を恐怖におとしめた邪霊ダークブレイン。 L5戦役、インスペクター事件による爪痕が癒えきらない地球に訪れた第三の災厄に人々は戸惑い、戦慄した。 だが、ハガネとヒリュウ改を中心とする戦隊により修羅、デュミナス、ダークブレイン、 そして最後に地球に対し叛旗を翻したシュウ・シラカワは打ち倒され、 地球に平和が訪れた・・・。 そして修羅を出奔し、修羅の新たな生きる道を探し出した次代の修羅王フォルカ・アルバーグとその仲間達は ソーディアン・転空魔城とともに新たな安住の地を求め再び異世界へと旅立っていった・・・。 ーーチベット奥地ーー ――――あれからどれくらい経ったであろうか。 天空の彼方に強大な覇気がふくれあがり、それがさらに巨大な力とぶつかり、 果てには拮抗するまで高まったそれらの二つのうち一つが穏やかに消えていってから・・・ 覇気・・・それは人誰もが持つ生命の力であり、とりわけそれを強くもつ修羅は それをもって巨大人型機動兵器・修羅神とのリンクを可能とする。 特に強く感じ取った覇気は二つ・・・ 一つは荒々しく強大、深淵にして苛烈、覇王の闘気というにふさわしい王の風格。 そして一つは若々しくも力強く、その一方で清らかな泉のごとく穏やかな、そう、一言で表すのなら『明鏡止水』。 その二つが互いに高め合い、激烈な死闘を演じ、その末にその一つが消えた。 残ったのは・・・若い覇気。 そのあとも覇気の高ぶりは感じ取れたが、修羅同士の戦いはその時点で終わったようだ。 だがその後も若い修羅の覇気の持ち主は共に立つ多くの強い覇気とともに、 暗黒の、そして邪悪な気配との戦いを経て、ようやく気の高ぶりがおさまった。 恐らくその若修羅をはじめとする強い気をもつ集団が勝ったのだろう。 それを確信し集中を解き立ち上がると背筋に冷たいものを感じていた。 「これだけ離れていても冷や汗をかく・・・か。  一体どんな修羅が戦っていたのか・・・」 とても今の自分では到達し得ない領域での戦いの気配だけで 自身の身も戦慄し冷や汗をかくに至り、若修羅は息を整えると武術の型をとった。 すると闇の中から 「終わったようだな」 そう先ほどの覇気の衝突の終結を語る声が響く。 若修羅は型を解き、直立すると礼をしてその闇の中から現れた人影に言葉を返した。 「はっ、お師匠様」 「良い・・・続けろ」 型を続けろと手で空をなぞり、修練の続きを促した。 改めて礼をし自身が再び武術の型を取ると、師は玉座のような装飾の施された椅子に腰掛け こちらの型を見ながら言葉を続ける。 「どうだ?あれこそが真の修羅の戦いの覇気・・・天の彼方であろうと感じ取れる程に強大だ」 「はっ・・・あれは、王の力・・・でしょうか」 少なくとも片方にはその風格があった。 すると師は笑みをわずかに浮かべ、 「そうだな・・・そしてあの若き覇気が新たな王となった。  お前とさほど歳も離れてはいまい・・・」 「・・・!」 自分よりも高い洞察力・・・そしてそれによりまだまだ自分が力不足である事を知らしめられ 自身の握る拳にも力が入った。 「ふっ・・・はっ・・・せいっ!」 ひんやりとした空間に、自分の体から発する熱気がほのかな湯気をのぼらせる。 そしてそれを振り払うように高速の拳を打ち、いくつもの型をこなしていく。 そんな様子を笑みを浮かべ見ながら、ほおづえをついたままの師はこちらに話しかけてくる。 「・・・あの場にいたいと感じたか?」 その言葉に、一瞬型が崩れかける。 普段はそんな事は決して言わないので、少し驚きながらも もちろん今のこの修練も大事なものであると理解しているし、そう教えられてきたので 姿勢をもち直してから 「いえ・・・そのようなことは・・・っ」 と言ったところで、師に背を向け振り上げた拳がパシィッと乾いた音とともに受け止められるのに気づいた。 そこから瞬時の反射で突然現れ拳を受け止めた何かから距離を取ると、 そこに居たのはさっきまで椅子に座っていた我が師の姿だった。 「っ・・・」 「フッ・・・あの戦いにあてられ滾っているな。貴様の拳から火のような覇気がこぼれているようだぞ。  無論今のお前の力ではあの戦場に立つ事はできない・・・だが、貴様には生来の流派に加え、  我が魔朧の拳を授けた。やがてはそれを自身の中で一つとし昇華し、あの若き覇気をもつ修羅にも届くことが  できるやもしれん・・・」 師は遠い目をしてそう言うとさらに言葉を続ける。 「もっとも、我が魔龍の塔が時空の裂け目に引き込まれこの世界へやってきてすぐに  天の彼方であの戦いが始まったからな。 参戦しようにも行く当ても無いが」 言葉程は困った様子ではないようだが、笑ってそう言うと 若修羅も言葉を返した。 「お師匠様は、今後どうされるおつもりなのですか?」 修羅界の崩壊・・・祖国の長老衆は遠からぬ先修羅界が崩壊すると言った。 そしてその言葉通り大地が裂け海が割れ空間をも歪ませるまさしく天変地異のような事態が世界を襲った。 それは戦いのみを求めた種族に対する天からの戒めか、 あるいは新たな戦場へ、新たな段階へ修羅を昇華させるための天の采配か、 いずれにせよそれまでの日常は終わりを告げ、修羅の世界は終わりのときを迎えようとしていた。 そんな中で若修羅とその師、そしてその一派を擁するここ魔龍の塔も時空の裂け目へと飲み込まれ、 気づけば見た事も無い大地へと置き去りにされていた。 「我々がこの世界へやってきてすぐにあの戦いが天の彼方より感じ取れ・・・  お師匠様は静観せよとおっしゃいました。  そして二つの強き修羅が戦い、片方が生き残った。  次は我々があの修羅と戦う、ということでしょうか」 若修羅がそう訪ねると師は何かの気配を探ろうとしているのか 気を集中させて少しばかりの間をおくと、 「・・・王を決める修羅の闘争があったにもかかわらず、  この世界は闘争の気配が落ち着きつつある・・・。世界はもっと混沌としてなければならぬ」 と、言う。 やはり今すぐの闘争を・・・そう考えると若修羅の握る手にも力がこもる。 するとさらに師は言葉を続けた。 「・・・とはいえ、我らはこの世界に来たばかりだ。我が武門にも戸惑うものが出ている以上一時のいとまを作るべきであろうな。  いずれにせよ、今のお前ではあの修羅に太刀打ちする事は叶わんのだ。  時間はある・・・アルフィンよ、己を磨け。そして我らの手でこの世界を新たな修羅界とするのだ」 「・・・は、はい!!」 師は闘争を主とする修羅の中でも深慮遠謀の士として知られる。 それに比べ自分はなんと短慮であったのか。 確かにまだまだ自身は未熟。それに加えこの世界に先に居た修羅がなぜ矛を収めたのか、 世界の闘争が落ち着きつつあるのか考えもしなかった。 この世界にも人が居るのであればいずれ闘争にいきつく。 その時こそが修羅の宴の刻。師の言葉に若修羅・・・アルフィンは力のこもった声で応えた。 スーパーロボット大戦 OG外伝 ーout side storyー 【クロッシングワールド】 ―――黒海沿岸部 地下洞窟――― 沿岸から続く大空洞が広がるこの洞窟で、雌伏の時を待っているDC残党軍。 ビアン・ゾルダークが倒れ、アードラー・コッホが倒れ、バン・バ・チュンも倒れ、それでもなおノイエDCを掲げた者達を まとめようとしていたロレンツォ・ディ・モンテニャッコも行方不明となり、 彼らもまた矛のおさめどころを見いだす事ができず、未だに連邦に対し抵抗運動を続けていた。 「大尉殿・・・!第5小隊より入電、修羅の軍勢による戦闘行動がやはり一週間前から無くなっているとのことです」 「・・・やはりハガネとヒリュウ改が修羅の本陣に攻撃を仕掛けたという情報は本当だったか。  さすがはビアン総帥を打ち破った船、といったところか」 DCの本来の目的としては地球の平和を脅かす対外勢力へは自らも立ち上がるというのは是とするところだが やはり連邦と与する事は好しとしない者が集まったのが今の残党軍の実情。 それはバン・バ・チュンやロレンツォ・ディ・モンテニャッコもそうだったように、今の連邦のやり方に賛同できないという 意思によるものだが、単独で修羅のような戦闘意思の高い集団とぶつかるのもまた困難なことというのが現実だった。 なのでハガネ・ヒリュウ改が異界の軍勢を打ち破ったというのは喜ぶべき事ではあるのだが、 それが連邦にまた大義を与えてしまったというのが痛し痒しといったところだ。 するとそこへ別の兵士が駆け込んできて、その場の責任者の男に敬礼して続けた。 「し、失礼します!」 「どうした。落ち着いて話せ」 「ハッ、ノイエDCユーラシア戦線指揮官と名乗る人物より暗号通信が入っております!  コードはノイエDCの・・・シャドウミラー隊の正規のものとなります」 「シャドウミラー・・・わかった。つなげ」 大尉の男がそう指示をすると、兵士はその部屋のモニタを操作し、呼びかけてきた回線を画面にまわす。 通信状態が悪いのだろう、ノイズだらけの画面にはシルエット程度しか映らなかったが 芯の通った声の男の声がスピーカーを通して聞こえてきた。 「私はシャド・・・ラー隊アレク・・・・・ヴァ。 まだ連邦・・・続けている友軍と出会えた幸運をうれしく思う」 まだ通信状況が悪いのか、所々途切れていたがシャドウミラーとは何となく聞き取れた。 やがて映像は相変わらず不鮮明なものの、音声は大分ノイズがなくなってきていた。 「友軍・・・?貴様達がバン・バ・チュン大佐を裏切り異星人についた事を忘れたと思うか?  よくもおめおめと我々ノイエDCの前に顔を出せたものだな」 インスペクター事件の後期、オペレーション・プランタジネットにて発生したシャドウミラーのインスペクター側への寝返りにより バン・バ・チュンは戦死した。その時共謀したノイエDCの者もいたが、それは利によって転んだ 言わばノイエDCの反逆者と言える存在で、DCの頃より意思を貫いてきた者にとっては自分たちこそが本流だと考えている。 それ故にシャドウミラーを標榜する者達は裏切り者、敵であり味方たりえないという道理だ。 するとモニターの向こうの男は肩をすくめた動きを見せて 「これは手厳しいな。 だが、我々とて本隊には合流できず地上に取り残された、言わば同輩・・・。  それにシャドウミラー本隊としてもあのままインスペクターにいいようにさせておくつもりも無かった。  機を見て内部から瓦解させる。 オペレーション・プランタジネットは必要な計画だった。  ・・・もっとも、アインストの出現という不確定要素も重なり、結局最終的にはハガネ・ヒリュウ改によって  異星人の脅威は取り払われたわけだが」 「御託は結構、で、何の用だ」 「フ・・・そちらは前線への支援を行う部隊だったと聞いている。 資材はある、が、戦力は不足している。  だから今日に至るまで残っては来たが大規模反抗に出るだけの戦力・・・パイロットがいない。  一方でこちらにはまだ腕に覚えのあるパイロットがいる・・・が、如何せん弾薬や資材が心もとない」 そう持って回った言い方で言うので、ノイエDC残党側も苛立ちを覚え、 「何だ、協力しようとでもいうのか。戦力を与える代わりに資材をよこせと」 「フ・・・半分だ」 「何・・・?」 「半分、正解だ」 と、モニターの向こうの男が言ったところで大きな地響きが基地を襲う。 同時に警報が鳴り響き、赤い光が基地中で点滅を繰り返す。 「て、敵襲・・・い、いえ、コードは友軍・・・基地内のAM数機が何者かに奪われた模様!」 「何っ!まさか・・・貴様っ!!」 大尉の男はすぐさまモニターの向こうの男を睨みつける。 すると彼は、 「資材は有効に使わせてもらう。 ただただ惰眠を貪る連中のために共に眠らされるぐらいならな」 と、口調を変えて自らが起こした事だと告白すると 通信画面がクリアになり、まだ若くも強い信念の眼差しをもつ男がコクピットに収まっている所がはっきりと映った。 「こちらアルファ、目的のコンテナを確保後ASRSを展開、合流ポイントへ向かえ」 それは遠方のどこというわけではない、リオンのコクピットだ。 そして男がトリガーを引いた直後基地が揺れる。 するとすかさず通信兵が格納庫からの報告、そして男が遠方から行っていると思われていた通信の大元を探り出し 続けざまに声を上げる。 「う、奪われたリオンが発砲!隔壁損傷!コンテナSR02SM-DSを奪われました」 「通信元が割れました!と、当基地内からです!」 「貴様っ!!我らの資材を奪っておいてのこのこ逃げられると思うか!!」 ドンっ!と机をたたき激高する大尉の男。 モニター向こうの銀髪の男は、 それでも尚不遜な笑みを浮かべると、 「フン・・・勘違いしてもらっては困る。回収したのは我々シャドウミラーの資材だ。  つまり預けていた荷物を返してもらったにすぎない。 それにこれは貴様らでは無用の長物・・・文字通りな。  それよりお前達には、もっと気にしなければ行けない事があると思うが?」 「何だと・・・!」 「この基地の情報を連邦軍に通報した。 最近この近辺の支部にも残党鎮圧の特殊部隊が結成されたと聞いた。  その力は測っておく必要がある・・・。  アビアノには死神が出ると聞くが・・・さて黒海には果たして鬼が出るか蛇が出るかな。  通報して30分・・・情報ではそろそろ到着する頃だ。 せいぜい善戦してくれ。健闘を祈る」 そう言い残し、通信は切れてしまった。 画面がDISCONNECTと表示されるとすぐに、再び大きな地響きが鳴り 画面や照明が切れてしまい、すぐに非常電源に切り替わるものの、今度は別の広域レーダーが鳴り響いた。 「今度は何だ!!」 怒りの向け先がいなくなってしまい、荒げたままの声でレーダー手に訪ねると レーダー手は声をうわずりながらも努めて落ち着いて報告を返した。 「上空に反応1・・・いえ、機体が出撃しました!数4!」 「件の連中か・・・!場所は知られている!応戦せよ!」 数分前まで静かだった沿岸の一帯に、戦闘開始の鐘が鳴らされた。 ―――上空、PTキャリア『ナハティガル』コックピット――― 戦艦などと比べて手狭だが、艦長席、オペレーター席、操舵手席、レーダー手席と もうひとつ1m高程度の台形の箱のようなものが設置されているブリッジというかコックピットと呼べる場所に まだ子供のような女の子の声が、だが話は的確な声が響く。 「目標を視認、通報があったエリアより黒煙が上がっています」 するとそれを聞いて同じくモニターを見た青髪のオペレータ・・・年齢は20代中盤から後半、 少し垂れ目加減ながら芯の強そうな眼差しで、しかしあきれたように 「何あれ、あれじゃ自分で場所を知らせているようなもんじゃない」 というと、すぐに自身の仕事に戻る。 通信回線を開き、出撃したばかりのチームメンバーへと情報を伝える。それが任務だ。 「みんな!あの煙の出てる地下空洞入り口から先の地下に熱源多数!情報通りあそこが目標地点よ。  作戦通り・・・それでいいですか?艦長。・・・リュカ艦長!」 あくまで自身はオペレーターであり、作戦司令は艦長。 お伺いを立てるように振り返り艦長シートの少し恰幅のいい男性艦長に言うと、 「う、うむ・・・向こうはトラブルがあったのか?アカリ君。これは想定外の・・・いやいや、罠かもしれん!」 「ですが、敵機の出撃は認められません。あれだけ目立つ事をしてて隠れてるつもりというのはないとおもいますが」 アカリ、そう呼ばれたオペレータは今一度レーダーを見て言うと 不安げな表情を見せるどこかたより無さげな青年艦長は思案を巡らせるように手を振り指をあちこちへむけて指示をひねり出す。 「だから罠なのかもしれないって言ってるんだ。 チームメンバーは降下位置を目標北500mに・・・」 すると艦長の男の声を遮るように、少女の声が割り込んで艦と味方への通信に響き渡る。 どこか機械的な音声、だが自然なイントネーションのその報告は 艦長席に座る青年艦長”リュカ”の斜め下に鎮座する台座、そこからぴょこんと顔を出す水色の頭から響いた。 「レーダーに反応、ランドリオン2、リオン2!基地入り口からです!」 「罠、にしちゃ種明かしが早すぎる・・・気もするけど」 アカリはぼそっと言うと先ほど報告を上げた少女の声の”それ”に向かって 「地下の熱源は?フロレンツ」 「ありません、すべて地上に出てきてます」 「オッケー、だそうですよ」 「うむ・・・敵に交戦の意思あり、か。 よし、じゃあ攻撃開始!敵戦力を無力化せよ!」 「・・・了解、みんな聞こえた!?各機、交戦開始!」 どこかたより無さげな艦長に嘆息しつつ、アカリは味方機への指示を伝える。 その言葉にアカリの耳にも各機からの応答が入ると、間もなく眼下で戦闘光が煌めきはじめた。 ・・・それからさかのぼる事2時間前・・・ ――トルコ地区・地球連邦軍 インジリスク基地 アカリ・キサラギ中尉自室――― DC戦争、L5戦役、インスペクター事件・・・これらの戦いにおいてこの一帯は 細かい戦闘行動はあったものの主戦場とはなりえなかった。 しかし修羅の乱と呼ばれる一連の戦乱の中、比較的早い段階で 修羅とは異なる混乱に見舞われたこの基地にある程度の戦力増強がなされたのは 戦乱に対する教訓ともいえるし、一方で 連邦政府が進める軍備拡大計画の影響が関係ないとはいえないだろう。 その証拠に、量産型ヒュッケバインMk-IIの配備状況は戦乱の前と比較しおよそ倍となり 次期主力量産機を狙う兵器製造元各種企業からの試作兵器の供与もこの基地でも始まった。 そんな軍拡の産物を預けられた部隊がこの基地にもあった。 地球連邦軍中東支部所属第2戦術試験機動部隊 通称"LFX小隊” 次期近代兵装の実験部隊は増えてきているがその中でも珍しく PTキャリアー込みでの運用、つまりベース機能をもった小規模独立部隊として 結成されたチームとなっている。 LFXはLightning Force、つまり電撃戦を目的とした特化戦力だ。 「・・・LFX、Xは何の意味なの・・・っと」 そこでキーを止めて続きの文を考えていると、不意に二の腕越しに画面を覗き込んでくる影があった。 「アカリさん、途中から感想になってますよ」 そう言うのは身長は1mにも満たない、全身薄い水色がかったメタリックな表面加工された所謂ロボットだ。 両手を下向きに広げ、まるで10台前半の少女のような仕草でひょこんと覗き込むあたり プログラミングをした人間のこだわりというか、趣味が伺える。 「なんなのもう、せっかく航海日誌付けてるのに」 「航海日誌って船の運航データとか業務記録とか寄港記録であって、アカリさんの個人的日記帳じゃない気が・・・  それにそういうの、私が記録してますし・・・」 そういうと一丁前に拗ねてみせる。それは年頃の少女の感情表現を少し大げさにしたような、人臭さのあふれるものだ。 勿論すべてがプリプログラミングされているわけではなく、学習コンピュータにより周りの人の色々な仕草挙動を 学習し、自分にふさわしいものを総合的に判断して取り入れるなど高度な人工知能の賜物であって ここまでくるともはや見た目の違うただの人間でしかないと言う人も多い。 だがなによりアカリとこの子・・・フロレンツLGY-04とは特別な関係がある。 「はいはい。あんたはよくできた子だよ。さすが兄ちゃんの愛娘。  ちょっと性格、ユウに似てきたんじゃない?」 つまりこのフロレンツの躯体はロボット工学者であるアカリの兄・カイ・キサラギの意欲作であり、 人工知能プログラミングには義理の姉、すなわち兄嫁が関わっており 行程は違えど兄夫婦の子供といってもよく、年齢設定も意図的に彼らの16歳の娘と13歳の双子の兄妹ら 実の子供に続け10代前〜中盤で設定されている。 アカリも子供は好きなので甥っ子姪っ子同様によくからかったりするが、 ちょっとだけ拗ねたあとしょんぼりするところは特に人間らしく、姪っ子を思い出すとはアカリもよく口にする。 「そうでしょうか?でもだとしたらうれしいです」 そう言うと、頬の辺りがほのかに赤く光る。 普段ライトグリーンの眼もこういう時の感情では桜色になり、所謂照れの感情を表すのだ。 他にも喜びの黄緑、真っ赤な怒りや真っ青の悲しみと、目の色や先ほどのようなフェイスマスクのライティングポイントを うまく使い感情表現豊かなサポートロボットとして作られていた。 アカリはそんなフロレンツの頭を軽くなでてやると 「それで?何か用があったんじゃなかったの?」 と、訪ねてフロレンツも思い出したように手をポンと叩いて複数回全力でうなずいた 「そうですそうです。15時からブリーフィングがあるので呼びにきたんでした」 「あと90分か・・・了解、また新しい任務かな」 「ムスタファ司令も参加されるそうですよ」 「お、じゃあわりとガチの任務じゃない。 エアロゲイターやインスペクターのゴミ集め以外の仕事も久しぶりかも・・・っ」 そう、ぐっと背伸びをしながら言う。 フロレンツも自分の活躍の場がやってくるということで少し高揚した様子でアカリの横で 「腕が鳴りますねっ。 でも異星人の機材残骸回収も馬鹿にならない仕事なんですよ。  主要箇所は情報隠滅の処置がされていることがほとんどで使い物になるデータは滅多に手に入らないんですから」 という。それにはアカリもわかっていると手をひらつかせて答えた。 「はいはい」 ただ、アカリの仕事上・・・つまりはブリッジオペレーター兼レーダー手としては、 熱源・動力反応もたどれなければ回収任務ではほとんど任務は無く、それもある程度フロレンツが サポートするため上空から見つけた反応について時折出撃メンバーに通達する程度。 とはいえ、いずれにしてもアカリの仕事はオペレーターであり、戦闘任務においても アカリとフロレンツ、そして艦長と専属メカニックは戦闘エリア外に退避するのが基本となっている。 「ま・・・ナハティガルはみんなの目と足だからね。 どんな任務でも基本的な事はかわらないか」 「今日も一日がんばりましょう!ってやつですね。  あ、それじゃあオーレンさんにもミーティングの予定伝えてきますね」 フロレンツはそう言いながら左手首を見るそぶりを見せて手をわたつかせた。ちなみに腕時計なんか付けてない。 どこまでも人間臭いフロレンツに、アカリは少し意地悪な笑みを見せて、 「ん、彼氏クンによろしくー」 といってやると、再びフロレンツは照れの感情を出して 「そっ、そういうのじゃないですからっ!  それじゃあ、遅れないでくださいねっ」 手をわたわたさせながら足早にアカリの部屋を出て行ったのを アカリもにやにやしつつ見送った。 「うひひ。ごゆっくりー」 パシュッと音を立てて扉が閉まる。 とてとてと足音が離れていくのを聞いて、アカリもふと冷静になったようなさめた表情で天井を見上げた。 「・・・なーにやってんだか、私は。  人の恋路を応援してる余裕なんかあるのかっつーの。  ・・・つか、あたしゃフロリンに負けるんかい・・・」 半年前の今頃、結婚を前提につきあっていた男と破局し 仕事に打ち込む気持ちも込めて丁度人員を募っていたこの基地への転属を希望した。 それから間もなく、特殊戦技教導隊のカイ・キタムラ少佐がムスタファ司令の招きでこの基地にやってきて テロリスト ドナ・ギャラガーの実験兵器ウェンディゴによる市街地および基地襲撃、 そして、修羅と呼ばれる異界の戦闘民族による俗に修羅の乱と称される事変。 昔の男を忘れるのにちょうどいいと言ってしまえば不謹慎だが、 そんな事を思い出す暇もないぐらいこの基地も最近慌ただしかった。 そして修羅の乱終戦から程無くして、この基地にも特殊任務部隊が結成される運びとなり、 アカリはその部隊が運用する中型PTキャリア艦『ナハティガル』専属オペレータとなった。 フロレンツはそのナハティガルの新型航行支援システムである。 そしてどういうことだかメカニックのオーレンはそのフロレンツに技術的興味の範囲を超えた 興味を示していてその扱いは同世代の人間の女の子に対してのそれのように手厚い。 10代の少女の性格モデルを採用・・・というより、中身は乙女といっても過言じゃない フロレンツもまんざらでもなく、なんというかお互いお似合いというような、そういう感想を周囲に与えていた。 「・・・あれも一種の変態なのかな」 ぼそっとつぶやくが、当然答えは返ってこない。 一つの結論にたどり着いたところで、アカリはブリーフィングに行く準備を始めた。 ―――インジリスク基地 ドック区画 ヴィクトール・フォン・ロンネフェルト。階級は少尉。 髪はライトブラウン、整った顔立ちにすらりとした長身で女性職員にもファンは多いが 所謂黙っていれば2枚目というタイプの人柄で、話してみると2.5枚目。それも含め 年上の女性にかわいがられることもあるが、多くの場合はただいじられることがしばしば。 L5戦役からインジリスク基地に配属され、修羅の乱末期に新部隊設立の運びとともに その機動部隊メンバーとして指名された。 実家は古い貴族の家柄の末裔で、幼き頃より父親からは貴族とはかくあるべしというものを教えられてきた。 もっとも新西暦の世の中では貴族という身の上だけでは食っていく事はできず 何より貴族として、そして現代の騎士として民草を守る剣たるべしと一念発起し士官学校を経て連邦軍に入隊した。 士官学校時代や新人の時には没落貴族や分家の倅、お坊ちゃんなどと揶揄される声もかけられることはあったが そんな彼にも友人はいた。オーレン・ワイズマン・・・部隊のメカニックである彼もその頃からの友人の一人である。 「あ、オーレンさーん!」 「ん・・・?今の声は・・・」 オーレンと機体整備について話していたヴィクトールは不意に耳に入ったおよそ軍の基地じゃ聞かない少女のような声に、 目の前のオーレンもすぐに気づいてこちらの話もそこそこに二人でそちらを向いた。 「やあ、フーちゃん」 「オーレンさぁーん!!」 駆け寄ってきてあと数mというところで駆け寄ってきた声の主、フロレンツが地面を蹴りオーレンに飛びつく。 「げっ」 ヴィクトールはとっさに身を引くが、メインターゲットであるオーレンはよけるどころか 両手を広げてウェルカムの姿勢。 ミサイルのように飛んできたフロレンツを抱きとめてそのまま勢い良くごろごろ後ろに転がっていった。 忘れがちだがフロレンツはロボット。身長は1mないが重量は・・・細かい事は乙女の秘密だそうだが どう少なく見ても同サイズの人間より遥かに重いだろうというのは、今目の前で5mは吹っ飛んだオーレンをみれば想像に容易い。 「オーレン・・・お前、いつか死ぬぞ」 どうやら無事のようだが、地面に倒れて胸の上のフロレンツの頭をなでながらオーレンは きょとんとしながらヴィクトールの言葉に答える。 メカニックの仕事着である作業服に身を包み、同じ素材の帽子をいつも愛用している橙色の髪色をしたどこか幼さも残る顔立ちの友人。 幼さと色気のある声色にやはり彼を気にする人は多いが、その特殊性癖に離れていく人も少なくない。それというのが・・・ 「え?大丈夫大丈夫、ヴィクターは大げさだなぁ。で、どうしたんだい。フーちゃん」 「ブリーフィング70分後、第8会議室です。お知らせにきましたっ」 「そっかわざわざ知らせにきてくれたんだね、ありがとう。それじゃあ後で一緒に行こうか」 「はぁいっ。じゃあ、フィーさん達にも伝えてきますね!」 「ん。じゃあ僕ここにいるからまたあとで」 忙しそうに、そしてうれしそうに駆けていくフロレンツを、起き上がったオーレンも笑顔で見送った。 勿論口頭伝達が必要な程の情報手段が時代遅れな訳もない。 ブリーフィングの予定は組まれたと同時に各隊員がもつ情報端末、Dコンに送られてくる。 それは30分程前にヴィクトールがオーレンと機体のセッティングについて話し始めたときに 二人で見て認識していた。 オーレンはフロレンツに気を使ったのだ。 もっともフロレンツも見た目はこれでもチームの母艦のメインシステムを担うサポートロボット。 それぐらいの情報は百も承知のはずだが 「・・・オーレン、お前なぁ」 「何さ、ヴィクター?」 「・・・何でも無い・・・」 この手のツッコミは部隊結成の顔合わせの折に、アカリ・キサラギ中尉と一緒にやりつくした。 今更言うまでもないとヴィクトールは軽くため息をつきながら肩を落とした。 オーレンとはヴィクトールが士官学校を卒業後配属されたアビアノで出会ったが その後オーレンは南極基地へと異動になり、そこで彼は南極事件に直面した。 そう、グランゾン・・・シュウ・シラカワによる南極会談を妨害すると同時にDC戦争の引き金ともなった事件。 オーレンはその時南極基地のシロガネの整備部隊におり、グランゾンによる シロガネ攻撃の時命を落としかけたという。 命からがら助かったオーレンは その後インジリスク基地へと転属となり、そこで同じくアビアノから転属したヴィクトールと再会し 以来再びつるむようになった。 たださすがにこの基地で再会してからの彼は、元からかわった人物だとは思っていたけど より一層変わったと印象を受ける事はある。 オーレンが同じドック区画内にもう二人のチームメンバーも居る事をフロレンツに告げると フロレンツは何度も手を振りながら、また数十分後来ると約束してオーレンの元を去っていった。 それを見送ったところでヴィクトールがふとオーレンに声をかける。 「・・・なんていうか、お前・・・昔からメカとか好きだったけど・・・  突き抜けるところまで行ったな」 「なにそれどういうこと。 っていうかさ、フーちゃんかわいいじゃん」 「いや、そりゃロボットにしたら可愛い・・・ってあのなぁ。そりゃプログラムされてるんであって」 「ロマンがないなぁ。 人と同じように考えるってアカリ中尉も言ってたんだし、  それにちゃんとフーちゃんには心があるよ。 俺にはわかる。だってメカニックだもん」 理由になってない。というかむしろメカニックだからこそその辺りは現実がみれるのでは無いだろうか。 と、そんなツッコミもとうにしたし、ともかく二人のやり取りは他の人とフロレンツの やり取りと比較して明らかに感情を出したやりとりだ。 「お似合いだよお前達・・・」 「そう?よかった♪  んで、話の途中だったよね。 ヴィクターの機体にはマオ社の試作武装を付けてもらうから・・・」 「資料は見た。しかしまた趣味的だな。あの機体はイスルギのガーリオンベースだろ?アジャストするのか?」 「その考え方古い古い。それにガーダイドはダニエル・インストゥルメンツの量産試作機だし  純粋なイスルギでもないしね。 ヴィクターの戦い方には合うと思うんだ」 好みを把握してくれている。 言葉で言うとたったそれだけのことだが、メカニックがそれを知っていてくれるとそうでないとでは 実際機体に乗った時のフィーリングがまるで違う。 そう言う意味ではヴィクトールもオーレンは信頼しているし、オーレンも積極的に こっちの好みのセッティングとなるよう精力的に働いてくれる。 実際ガーダイドを試験的にこの基地に配備された時も、適性を汲んでくれたのも彼だし すぐさまコックピットの調整から足回りの微調整までやってくれたのも彼、オーレンだ。 武装の適性も、おそらく見立て通りなのだろう。趣味的と言ったのも別に嫌だという意味合いで言ったつもりも無いわけで。 「まあ、デザインは嫌いじゃない。 威力も元になった装備から大分上がってるみたいだし」 「せっかくのガーリオンタイプの新型だし、アサルトブレードってのも味気ないと思ってたんだからぜひ使ってみてよ」 「ああ」 「あと・・・」 オーレンは資料を映し出した端末を操作し、次の装備の説明と確認を始めた。 ―――ドック内、PTケージ――― スフィール・L・キーヴェイル、階級は少尉。 銀色の髪にまだ少女とも言える体躯。160に満たない身長はこの基地の誰よりも低いが この基地に来たのは修羅の乱終結間際で、士官学校卒業より1月早く 戦時特例で現場・・・このインジリスク基地へと配属されたれっきとしたパイロットだ。 成績は主席で特に実技については群を抜いていたため、 卒業を前倒しするに値すると判断されての配属だった。 ただ現場は人手不足だったとはいえ新人にそこまで多くの局面に立たせる事も無く、 またこのインジリスク基地は修羅の乱序盤はともかく、 そこまで大きな戦闘に関わらなかったため、 技術面で特に実力の高いと評されるスフィールでも戦闘に参加したのはただの2度。 それでも新人にしては敵機三機の撃破という優れた戦果を挙げており、 今回LFXチームへと配属されたのもその実績と期待から、ということである。 「イーリスさん、今回の任務からこれに乗り換えるの?」 いよいよ部隊も本格運用となってきて、今日は重要任務も課せられる模様。 タイミングを合わせての各員新装備・新機体の配備にスフィールらも朝から忙しく 同じく轡を並べる一回りも年上の同輩、イーリス・セレイル少尉の機体が PTケージの一角にある戦闘機ケージに収まったところでそのパイロットに声をかけた。 すると身長も自身より頭一つ分高い、というより色々発達した赤髪の彼女は ジャケットをラフに着崩したスタイルで、口にした禁煙パイポを口の端に咥え直し笑みを浮かべる。 「あァ、フィーかい。やっと仕様通りできあがったてんでね。どうだい、いい感じじゃないさ」 と、得意げに見上げて言う。フィーというのはスフィールのあだ名だ。 一番年下というのもあるが、堅苦しい階級や挨拶はイーリスも好きではなく 自身をそのように呼ぶ代わりにスフィールの事も彼女の士官学校時代のあだ名で呼んでいる。 スフィールも言われて横に立ちその機体を見上げると、いくつかの特異な点に視線が向いていた。 機体そのものはDC戦争前後からコロニー統合群やDCを中心に使われていたシュヴェールトのラインを 汲む機体とのことだが、それらよりも大型で全長はPTの身長にも並ぶ程。 ただし正直スフィールにはその辺のデザインラインよりは別のところにじっと視線を向けていた。 戦闘機の体裁をもっているこの機体には どう見ても機体下部にスラスターでもミサイルでもなく、リオンの膠着時のような脚部に 近いと言えばそうも見えるが、そうであればむしろ腕にも見える、そう言う折りたたまれた部位が見て取れる。 「・・・イーリスさん。何これ」 「ん?何に見える?」 「・・・ハードポイント?そもそもこの機体かなりおっきいよね。変形するの?」 インスペクター事件当時、そういうAMが試験的に実践投入されたというのは現場でも知られた事実。 PTに関して言えば極東支部でもDC戦争当時マオ・インダストリーの試験機が運用されていたことや、 巡航形態と人型形態それぞれに変形可能な機体については、どの時期に置いてもそれなりに使われていたそうだ。 するとそのスフィールの言葉にイーリスはニヤニヤして、 「ふふん、半分正解かねぇ」 と、丸いサングラスの奥で切れ長の瞳を光らせた。 「半分て・・・足でも生えるの?まさかね」 「おっと、それ以上は見てのお楽しみって・・・おや、珍しい組み合わせだね」 「ん?あ、フロレンツにユウ大尉」 イーリスが先に気づいて後ろを振り返ると、スフィールも近づいてきた二人を手を振って迎えた。 チームの母艦となるキャリア・ナハティガルのメインシステムにしてサポートロボットであるフロレンツと、 機動部隊隊長である、ユウイチロウ・コンドウ大尉。 日本人だが大柄でオオカミのように鋭いまなざしと、鷲のような髪の色、 頬には大きな傷があり、一見強面・・・歴戦の勇という印象を抱かせる出で立ちの男だ。 そして、もう一人?のフロレンツはその立場上アカリ・キサラギか、メカニックのオーレン・ワイズマンと一緒に居る事が多いので イーリスは珍しい組み合わせと言ったのだ。 するとユウイチロウも、 「そこで会ってな。 ミーティングを伝えにというから一緒に来た。  イーリス、フィー、機体の受領は済んだみたいだな」 と、ユウイチロウも二人を階級ではなく名前、愛称で呼び、イーリスの機体・・・そして、その隣のデッキに固定されている 量産型ヒュッケバインMk-IIの改修機を見上げ、そしてさらにフロレンツも言葉を続ける。 「量産型ヒュッケバインMk-II・現地改修型、コールサインはアイスフォーゲルですよね」 アイスフォーゲル・・・カワセミと愛称を付けたこの機体。 LFXチーム配属にあたり、適正にあった機体が配備され、 チーム戦術に置いてスフィールの適性からもインファイトが得手とされたことで、両腕にビームカタールソード、 両腰にはPTX-001に配備されていたニュートロンビームをベースに、連射性を向上するようにして開発された ニュートロンビームガンが2丁拳銃よろしく装備されている。それだけならただの武装変更だが、 バックパックについてはマオ・インダストリーでインスペクター事件時に開発された多翼式試作型スラスターを 一般機でのテストの名目でまわしてもらい、高速接近一撃離脱の突撃戦法に特化した機体に仕上がっている。 「はい。私の方は昨日すでに届いていたので、シートセッティングも終わってます。  シミュレータは先週から何度も繰り返してるのですぐ実戦できます!」 「ああ。だが過信は禁物だ。 先の軍勢・・・修羅の攻勢が区切りを見たとはいえ、  まだ戦闘行動を続けてる連中の中には百戦錬磨の強者もいるんだからな」 「ま・・・このあたりはまだ平和な方だけどね」 逸るスフィールを諌めるユウイチロウにイーリスは気楽な風で言うと、 ユウイチロウは今度はイーリスの方を向いて、眉をしかめる。 「そう思っていると、ドナ・ギャラガーの時のような事件で痛い目を見るんだ。  あの時キタムラ少佐がいなかったらこの基地そのものが危なかったのを忘れたのか」 「そういえばあの時基地に居たのってあたし達の中じゃ自称貴族の坊やだけだったっけ」 イーリスは禁煙パイポを揺らしながら天井を仰ぎ言う。 スフィールはその当時まだ士官学校在籍中で、伝聞で知っているのみ。そのままイーリスの話に耳を傾ける。 「あたしは山岳地帯の通信施設が異常だっていうんで偵察にでたんだけど・・・  思えばそれもテロリストの揺動だったんだろうけどさ」 と、イーリスもそのときの事は伝聞だという。 彼女の言う通り、この場でその事件を実際目にしているのは戦場においてはヴィクトールのみで スフィールはまだリオンやガーリオンなどのDC時代から運用されているAMとしか実戦での交戦はなかった。 「今回の任務は戦闘があるんですか?」 スフィールが気になってこのあとのブリーフィングの事を訪ねると、 ユウイチロウは首を横に振り 「いや、今回も基本的には前回同様破壊された機体回収・・・だが、  今回のターゲットは修羅の交戦跡になる。 これについてはまだわからない点が多く、  EOTという意味では民間の軍需産業やテロリストも目をつけているからな」 「DC残党が取りに現れてくれりゃ一石二鳥なんだけどさ」 「そうは言うがな、リスクが重なるのは避けたいところだ」 慎重派の隊長らしい。そう言う代わりにスフィールは肩をすくめると スフィールの腰にセットしてあるDコンからアラームが突然鳴り響く。そしてそれはスフィールのだけではなく イーリス、ユウイチロウ、そしてフロレンツからも響いてきた。 スクランブル要請・・・その音の意味するところに、四人は顔を見合わせて ブリーフィングルームではなく自分たちの母艦であるナハティガルのブリッジへと急いだ。 戦略支援PTキャリア『ナハティガル』――― PTを目的の地点に運ぶにあたり、連邦軍には前々から課題がつきつけられていた。 レイディバードがPTキャリアの主流ではあったが、PT輸送能力こそ申し分ないものの いざ戦闘エリアに臨むにあたってはやはり航行性能やレーダー性能、 そして輸送機能を主としたがためか、一度戦闘を行ったPTを収容した際は あとはまた補給のため基地へと向かわねばならない。 とはいえハガネをはじめとする万能母艦はコストがかかり過ぎ、 DCが開発したストーク級にしても高く、また規模が大きくなりすぎる。 レイディバードクラスの輸送能力を持ちつつ、簡単な修理や補給能力があり前線の継戦能力を向上させる 戦略支援PTキャリアの試作として完成したのが今アカリやヴィクトール、スフィールらが 集められたこの船、ナハティガル・・・ そしてその管制支援システムは人工知能・ロボット工学を専門とする日本の研究所に依頼し、 艦内の各システムを半自動的に行う支援システムとしてナハティガル、そしてこのチームに組み込まれたのが フロレンツ・LGY-04・・・自律型インターフェイスシステムである。 フロレンツはブリッジに専用の席をもっており、それが艦長シートの前にある台形のボックス。 そこに首から下をすっぽりと納めるように入り、彼女は艦と一体化する。 見た目はなんかこう・・・蒸し風呂のようだというのは誰も思っても口にしない。 「ナハティガル、起動。 基地司令部との通信をつなぎます」 「了解、メインモニターに映すわ」 面倒な回線接続などはすべてやってくれる。アカリは表示画面の選択だけを行うと ブリッジ前方の大型モニターにこのインジリスク基地司令のムスタファが映り、 艦長でありこの部隊司令でもあるリュカ・デュラン大尉、 機動部隊隊長、ユウイチロウ・コンドウ大尉、 機動部隊所属、ヴィクトール・フォン・ロンネフェルト少尉、 同じく、イーリス・セレイル中尉、 同じく、スフィール・L・キーヴェイル少尉、 専任メカニック、オーレン・ワイズマン曹長、 そして自身、ブリッジオペレーター、アカリ・キサラギ中尉 そこにフロレンツ・LGY-04を加えた8人、LFXチーム全員が真剣な表情で基地司令に敬礼を返した。 通常基地司令が、階級が高くても大尉が最高の部隊に直接指示を下すというのは通常ないことだが、 ここがそこまで大きな基地でないということと、この部隊が彼の肝いりの部隊というのがその理由だ。 ムスタファも敬礼を返すと、掌をひょいと下におろす仕草を見せて 「ああ、楽にしたまえ」 と敬礼を解くよう指示した。 するとオペレーター席のアカリを覗くメンバーも皆手を後ろに組んで話を聞く姿勢を取り、 ムスタファはそれを見て話を切り出した。 「実は先ほど基地に匿名の通報があった。  ポイント291F、黒海沿岸のこのエリアでノイエDC残党が潜伏しているというもので、  先日ここからさほど離れていない地区で連邦軍のものではない戦闘機を確認したことから  総合的に判断し、ある程度警戒をもってあたるべき事案と判断した。   諸君らにはこの地区に潜むと思われるノイエDC残党の発見、そして発見後施設の制圧をしてもらいたい」 命令はシンプルにしてストレート。 ムスタファも手短かに用件を伝えると 「質問はあるかね」 と、続けた。 すると部隊司令リュカが挙手し、 「よ、予想される敵の規模はどのくらいでしょうか?」 「それについては不明だ・・・が、先の戦乱では沈黙を保っていたことから  戦力の余力はある程度あると考えても良い。だからこその諸君らの抜擢だよ」 それはそれなりの抵抗が予測されると読み替えてもいい答え。 そして欲しかった答えじゃないと言わんばかりに、リュカはこわばった表情で 「わかりました」 とだけ答え下がる。 その他は質問が無いと見ると、司令のムスタファはその細い目で隊員全員を今一度見渡し、 「諸君らはこのインジリスク基地の精鋭チームだ。  いずれはATXチームやキタムラ少佐の教導隊のように音に聞こえたチームになると信じている。  ・・・今作戦における諸君らの奮闘に期待しているぞ。以上だ」 「ハッ!」 全員が再び敬礼で返し、ムスタファからの通信は切れた。 ブリッジに静寂が戻り、モニターには作戦エリアなどの情報が映ると 艦長であるリュカが一番最初に声を上げた。 「よ、よし!いよいよ我々の真価が発揮されるときが来たぞ!大丈夫か!?みんな!」 「・・・大尉殿こそ大丈夫?声ガチガチじゃないさ」 「し・・・心配ご無用だ!よし、サボット君!5分後には出発だ。作戦を確認する!」 イーリスの指摘も、相変わらず声はうわずったまま メインシステムであるフロレンツに指示をする。 サボットというのはサポートロボットの略、つまりはフロレンツの役割を示してのものだが、 フロレンツという名前があるのにそう呼ばないリュカの対応には、特にフロレンツがお気に入りの オーレンは少しムッとした様子を見せていたのをアカリは見逃さなかった。 その一方でフロレンツはシステムに同期すると少し固い印象になるのか、 支援システムらしく手際よくメインモニターに必要な情報を集めていく。 「状況の概要をご説明します。  目標のエリアは黒海に面した沿岸地域。近くに町はありますが、L5戦役のエアロゲイターの襲撃以来  無人のエリアとなっているため、戦闘による地域住民への影響レベルは最低ランクのEと思われます」 「想定される敵戦力は先の司令の言葉通り不明・・・余力を持つ可能性はもちろんだけど  この基地の戦略的価値を考えると牽制、あるいはDC側の兵站の可能性もあるんじゃないですか。  アジア戦線、ヨーロッパ戦線いずれに対してもここは動きやすいですからね。  シルクロードならぬ、バレットロードといえばいいかな」 ヴィクトールがその部隊の戦略的価値を補足する。 スフィールは素直にそれを感心してうなずいて 彼もまた少し得意げな表情を見せていたが、この手の話は長くなるのをこの場のみんなは知っていたので それはユウイチロウが手で遮って、 「戦略的講釈はまたの機会だ。いいな?ヴィクター」 そう言うと、ヴィクトールも両手を上げて「了解」の意を示して黙り、 ユウイチロウはメンバーを見渡して話を続けた。 「・・・続けよう。とにかく今我々に課せられているのはこの一帯に潜む残党軍の制圧。  フォーメーションは基本通り、フォワードはヴィクター、フィー。  本装備では初の実戦投入になるが、問題ないか?」 「こっちはガーダイドはもう何度も使ってますから。そっちは受領したばかりだろ?」 「私も大丈夫です!シミュレーションで前もってバッチリです」 二人とも自信満々で答える。 自信過剰にも思える発言だが、 先のカイ・キタムラ少佐がこの基地に来た際も、この基地のパイロットたちが 実戦経験の少なさから土壇場での勝負度胸が不足している点は懸念されていた点でもある。 その点、その際キタムラ少佐の教習を目の当たりにしていたヴィクトールも、 その後ではあるが機動修練では首席の成績を収めたスフィールも、チーム抜擢の理由はそのあたりの自信を含めた 腕を見越しての事だろう。 「よし・・・イーリスのシェイルフィードについては戦闘エリア外で広域監視、後方支援にまわってくれ  シェイルフィードは規格が今までの支援機と違う。 慣熟にまずはつとめてくれ」 「了解、ま、最初はね」 「降下部隊は俺のゲシュペンストがセンターのVフォーメーション。基本となる形だ。  ナハティガルはシェイルフィードの情報を集めて通信管制を。  出撃後の全体指揮は艦長、よろしく頼む」 「了解だ。コンドウ大尉。 後ろは任せたまえ!  それでは各員配置につけ!LFXチーム、出撃!」 役目を与えられてリュカも胸を張る。 通信管制についてはアカリの領分となるので、アカリも敬礼して応え、 それを受けてリュカが艦長席に腰を下ろし、出撃の号令をかける。 特殊作戦部隊、出撃のときである。 そして到着後遭遇したのは、もうもうとした煙をあげる敵の施設。 潜伏している部隊にしてはいささか目立ちすぎなのも、 不測の事態があったことを意味するのだろう。 迎撃に出たアーマードモジュール隊も浮き足立っており、目の前のLFXチームの他に 気がかりがあるような様子で、その隙をみすみす逃すチームでもなかった。 「援護する!」 両手にM90マシンガンを携えた量産型ゲシュペンストMk-II改タイプN。 ユウイチロウの言葉とともに轟音をあげて放たれた無数の銃弾は 地面を滑走する2機のランドリオンの足を止め、さらには脚部の無限軌道スティックムーバーを打ち抜き 一気にその機動力を奪い取る。 「!しまったっ!・・・ハッ!」 足を取られ気をとられ、注意力が下がった敵兵は不意に太陽が遮られた事への反応が遅れていた。 「遅い!えぇーいっ!!」 目一杯後ろに腕を振りかぶり、ランドリオンを飛び越す形で一回転したのはスフィールの量産型ヒュッケバインMk-II改、 通称・アイスフォーゲル。 両腕に装備したビームカタールソードはランドリオンの両腕を切り落とし、 そのまま敵機の背後に着地すると姿勢を低くして今度は横に一回転、踊るようにして ランドリオンの四つあるうちの後ろ脚部スティックムーバーを斬り、四肢・・・いや、六肢を奪われたランドリオンは ほぼ胴体のみとなって地面に転がる。 「一機撃破!やった!」 振り返ってガッツポーズ。すると上空ナハティガルからフロレンツが通信を入れてきた。 『敵機をスキャンしました。内蔵火器は機能していない模様、敵機戦闘不能です』 「すごいね!そんなのもわかるんだ!」 『はい。あっ、左後方ロックサイン・・・』 素直に感心するスフィール。そんな彼女に返事をしかけたフロレンツが後方の敵機の照準に反応して 警告を出しかけるが、斜線上に黒と青でカラーリングされた一機のガーリオンタイプが割り込んでくる。 「気をつけろっ!」 その影、ヴィクトールがそう言うのとほぼ同時に、彼のガーダイド・ナイトの左腕に展開された 円盤状のシールドに別のランドリオンが放ったレールガンの弾丸が火花を散らす。 援護防御に成功したガーダイド・ナイトは、敵の砲撃が止んだと同時に 今度は右手に持った突撃槍(ランス)をまっすぐ敵ランドリオンへ向け、テスラドライブの出力を上げた。 そして次の瞬間、ドンッ!!という重たい音。 それとどちらが早かっただろうか。 鋭い衝撃が敵ランドリオンを貫き、大地にしっかり足を踏みしめたガーダイド・ナイトは そのまま敵を持ち上げるようにして槍を突き上げていた。 本来であればそこで終わりだった攻撃だが、ガーダイド・ナイトが装備した武器にはまだ続きがある。 「これで・・・っ!」 撃発のトリガーが引かれたその直後、貫かれた敵ランドリオンの内部で爆発のような衝撃が起こり、 激しい炸裂音とともに機体が爆ぜ飛ぶ。 そしてその一連のモーションのあと、武器からは薬莢が一つ役目を終えたように飛び出して地面に転がった。 「炸裂式インパクトランス・・・通称リボルビングランスね。 なかなかいいじゃないか。僕好みだ。  ・・・敵も、直前に脱出したか」 すると、そう得意げに言うヴィクトールにスフィールが声をかける。 「ありがとう、ヴィッ君」 「ブッ!!・・・ビッ君はやめろっていったよね!」 「”び”じゃなくて、”ヴィ”。 あだ名だよ。キミの名前呼びにくいし、いいよね♪」 「やだよ!っていうか、日本人みたいなあだ名命名だなおい! 君アメリカ系だろ?」 「そだよ?」 「そして僕はドイツ系!どうしてそうなる?せめてヴィクターって・・・!!」 と、そこでヴィクトールは何かに気づいた様子でいきなりスフィールのアイスフォーゲルに隣接する。 そして再びフィンシールドを今度は頭上に構えると、二人を狙った上空のリオンからの レールガンが雨のように降り注いだ。 「二機で波状攻撃で休ませない気か、ソニックブレイカーの準備も・・・させてくれないか」 今シールドをたためば、あるいは突撃の邪魔にならないよう構えれば敵の攻撃をまともに受ける。 それで攻めあぐねているのだとスフィールもわかると、スフィールは虎の子のスイッチに手を伸ばした。 「じゃあ、突撃の準備して!」 「何・・・?」 「Gウォール、展開!」 スフィールがスイッチを入れると、二機を覆うように斥力場が展開する。 レールガンの銃弾はその壁に触れると威力を失い、そのまま重力に従い二機の上に落ちてくると コンッと音を立てて装甲にぶつかるだけ。 装備は正常に働いている。それがわかるとスフィールは、いやスフィールの機体であるアイスフォーゲルは ガーダイド・ナイトに目配せをするよう顔を向け、それを見るやヴィクトールも攻撃態勢に入った。 「向こうも驚いている・・・!いまだ!!」 両肩のテスラドライブがうなりを上げ、ガーダイド・ナイトが一気に上空めがけ加速、 再びの一撃、リボルビングランスが怯んだ拍子のリオンを打ち貫いてのインパクト、 とっさに敵パイロットが脱出のレバーを引いて飛び出すと、 それに合わせたのだろう、ヴィクトールの放ったワンテンポ遅れての撃発により爆散した。 そしてそのまま空中で、左手で腰後ろのバーストレールガンを抜いて もう一機のリオンに狙いをつけて言い放つ。 「撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけ・・・だ!」 レールガンのお返しとばかりに、リオンのそれを強化したバーストレールガンの銃口が 電磁波の光を煌めかせながら火を噴く。 放たれた三発の銃弾はリオンの腕部武器と脚部を撃ち抜き、リオンはバランスを崩した。 と、今度はそこへユウイチロウの量産型ゲシュペンストMk-II改タイプNが突撃しており、 「よくやった・・・!これで終わりだ!」 その言葉とともに放たれたプラズマバックラーの一撃が、リオンの胴体めがけふりおろされる。 とはいえ、エネルギーは込めていない通常の打撃兵器としての攻撃であり、 完全に主導権を取った形でユウイチロウはリオンのパイロットに呼びかけた。 「戦況は決した。無駄な抵抗はやめて投降せよ」 「・・・そーゆーこと♪」 地上に降りたヴィクトール、そしてその様子を見上げていたスフィールもまた 先ほど倒したランドリオンから這い出てきた敵兵に投降を促すホールドアップの姿勢をとって 外部スピーカーで呼びかけてやると 落胆した様子のDC兵が、力なくうなだれた様子がカメラに映っていた。 状況開始からわずか数分、期待通りの戦果といっても差し支えないだろう。 やがて基地からも降伏を示す通信が入り、チームは事後処理へと仕事を切り替えていった。 「・・・LFXチーム・・・インジリスク基地発の混成特化戦力の部隊・・・  基本思想はラングレーのATXチームに近い、電撃戦を基本戦術として  短時間で相手の戦力を無力化するために必要な装備を各兵器企業から  トライアルの面目で供与を受けて、装備試験の傍らこの地区のDC残党や  EOTの回収を任務とする・・・か、それで一小隊にあんなキャリアや偵察機を詰め込んだりして」 海中・・・主動力を落とした薄暗いコクピットの中、地上に配置したカメラの映像を見ながら一人つぶやく。 ペンライトで資料を照らしながら、 「そもそもこの一帯にDC残党が潜伏している情報を博士はどこから仕入れたのかわからないけど、  私の相手横取りされちゃったし・・・離脱したリオンもASRSでもう追えないし・・・  だからって私が連邦軍と戦う訳にもいかないし・・・  ・・・おまけに出てきたのがこの資料通りなら、見つかったら少し厄介かも・・・  あの戦闘機広域情報管理の高速演算ユニット積んでるんじゃないの?  ASRS使ってなければこの辺の地形データとの比較でバレてる気がするわ・・・」 そしてさらにページをめくる。 人型の機動兵器はパーソナルトルーパーとアーマードモジュールの混成部隊。 隊長機として報告されている機体に目をやって再び映像と比較して独り言をこぼした。 「・・・直接戦闘するのは量産型のゲシュペンストMk-II改、ガーダイドの改修型、  シュテルベンはいないけどこれもインジリスクの水準からすれば頭一つ抜け出た装備・・・。  あっちのあの量産型ヒュッケバインMk-IIのカスタム機・・・先の2つよりは性能は下がるか。  思想は私のヒュッケと近いけど、練度は低い・・・勘はよさそうではあるけど・・・  正直よくこれで部隊運用まとまってるなぁ。  やっぱりキーはこのゲシュペンスト改型か。まだ連邦でも一部にしか配備されていない機体なのに・・・。  僚機の支援しつつも自身での遠近戦共に隙が少ない。T-LINKのような反応じゃない・・・あれは単に経験の賜物か。  どこにもひとりぐらいいるのね。できるひと」 そう言い、画面に映る量産型ヒュッケバインMk-II改・アイスフォーゲルや 量産型ゲシュペンストMk-II改タイプNの画を指でなぞっていると不意にコクピット内でアラート音が響いた。 そのアラートが示す要因・・・それはすぐにわかった。そう、接近警報だ。 「っ・・・!見つかった!?・・・でもこっちだってASRS・・・いや、違う・・・敵の接近?  っ!!・・・この反応って・・・だって彼らはもう地球を去ったはず・・・  ってそんな事を言ってる場合じゃないか。 むしろこれは離脱のチャンス・・・  落ち着いて・・・よく状況を見極めて、ナナミ・・・!」 ナナミ、自身を鼓舞するようにそう言うと、ナナミはレーダー圏内に現れた反応・・・ データベースから呼び出されたそのものを表す勢力名に今一度目を落とした。 そして一言、その名をつぶやく。 「・・・修羅・・・!」 ナナミの表情に戦慄が走る。 修羅の饗宴が、再び始まろうとしていた。
第二話